Classici giapponesi con furigana
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かぎからぬけだしたおんな
鍵から抜け出した女
海野 十三
Leggi 鍵から抜け出した女 (かぎからぬけだしたおんな) di 海野 十三 (うんのじゅうざ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 21.188 caratteri · 43 schermate
その考えもつきたころ、僕は、
「ああ、そうだ。……忘れていたぞ、恋人の鍵を!」
恋人の横顔を刻んである鍵――それをトンと忘れていたのだった。僕はそれを膚につけていた。それを取出して、じっとその横顔を眺めた。鍵の握り輪の中の女は、ウェーブをしたような髪を結っていた。すんなりと伸びた鼻すじ。小さい眉、ことにつぶらな下唇、そして形のいい可愛い頤……
「もし、北川さん」
わが名を呼ぶこえに、目覚めてみると、傍に秀蓮尼が座っていた。いつの間に庵主は帰ってきたのか気がつかなかった。僕はいい気持になって、昼寝をしていたものらしい。
「やあこれは……」
僕はガバと起き直るなり、頭を掻いた。秀蓮尼の顔を見ると、これは愕いた。なにごとが起ったのであろう。彼女の顔色は紙よりも白かった。――
「北川さん。この鍵は貴方のですの」
「そうです、僕のですよ」
「どこで手に入れなさいまして?」
「それは、――」
といったが、秀蓮尼は眼を輝かし、いまにも飛び掛ろうという勢を示していた。これは思いがけない大事件になった。何が俄かに仏のような彼女を、セパート犬のように緊張させたのかまったく彼女は別人のごとくになった。