Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くにさだえがく

鏡花短篇集 川村二郎編

泉 鏡花

Leggi 鏡花短篇集 川村二郎編 (くにさだえがく) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.644 caratteri · 40 schermate

Aozora Bunko

……もう不断、本場で旨いものを食りつけてるから、田舎料理なんぞお口には合わん、何にも入らない、ああ、入らないとも。」

と独りで極めて、もじつく女房を台所へ追立てながら、

「織さん、鰯のぬただ、こりゃ御存じの通り、他国にはない味です。これえ、早くしなよ。」

ああ、しばらく。座にその鰯の臭気のない内、言わねばならぬ事がある……

「あの、平さん。」

と織次は若々しいもの言いした。

「此家に何だね、僕ン許のを買ってもらった、錦絵があったっけね。」

「へい、錦絵。」と、さも年久しい昔を見るように、瞳を凝と上へあげる。

「内で困って、……今でも貧乏は同一だが。」

と織次は屹と腕を拱んだ。

「私が学校で要る教科書が買えなかったので、親仁が思切って、阿母の記念の錦絵を、古本屋に売ったのを、平さんが買戻して、蔵っといてくれた。その絵の事だよ。」

時雨の雲の暗い晩、寂しい水菜で夕餉が済む、と箸も下に置かぬ前から、織次はどうしても持たねばならない、と言って強請った、新撰物理書という四冊ものの黒表紙。これがなければ学校へ通われぬと言うのではない。科目は教師が黒板に書いて教授するのを、筆記帳へ書取って、事は足りたのであるが、皆が持ってるから欲しくてならぬ。