Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ながやてんいちぼう

長屋天一坊

山本 周五郎

Leggi 長屋天一坊 (ながやてんいちぼう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.453 caratteri · 57 schermate

Aozora Bunko

柄は、これは鮫皮のようでもあるしまた巻いたもののようでもあるし、格別なんでもないようでもある。目貫や柄頭は、もちろん存在する。しかも金などという俗な金具は使用してはない。薄い赤銅の延板を使って、どちらにも無雑作に井桁に橘の紋が、敲き出しで浮かしになっている。

鞘はという、……鞘は剥げちょろけで、塗料のところは黒であったか鼠色であったか確言は出来ぬ。まあ見たところ、なんとも云えない風雅な、ちょっと奥床しい色合いというものだろう。これにも井桁に橘の紋が、それだけは判然と、胡粉ようのもので捺染してあった。

「どこかで見たような紋だが」吾助は考え深げに小首を捻った、「なにかどこかで、井桁に、だんぶく、ああそうだ法華の寺にある紋だが」

こんな独り言を云いながら、敬虔に短刀を抜いてみた。恐らくあげ物というやつだろう、鍔から切尖までのバランスがとれていない。また研ぎがよほど乱暴――それは大道の古道具屋で買ったときまったくの赤鰯だったので、肉の減るほど研がなければならなかったわけだが――だったとみえ、にえも匂いもみだれも殆んど消滅し、まるで「相済みません」と詫びを入れているような刀相をしていた。