Classici giapponesi con furigana
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ながやてんいちぼう
長屋天一坊
山本 周五郎
Leggi 長屋天一坊 (ながやてんいちぼう) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.453 caratteri · 57 schermate
銀太はべそをかいて云った、「本物の天一坊は偽物で、偽物の天一坊が本物だってよ、……なんだかいやアなこころもちになって来た、ことによるとおいらなんぞも洗ってみれゃあ五十万石かなんぞの諸大名の御落胤かもしれねえ、そうじゃねえか金太」
「うん、……その心配はある、それは気をつけなくちゃいけねえ、かもしれねえ」
「こいつあとんだ事になった、おらあ寝そびれて風邪をひっこみそうだ」
だがそれにしても、この期間中かのうす馬鹿なる御落胤は、どうしていたか。彼もまた、蓋をあけたところは、べそをかいていた。彼はあれ以来はずっと繩屋の一室に檻禁され、昼夜いずれの時と限らず、臼であり色けちであるところの、娘おわきの訪問を受付けなければならない。
その点うす馬鹿は無限的能力を持つと俗人は云うのであるが、それは単に世におもねるの説であって、組織学上から検討してみても、五官五能の満足ならざる人躰が、その一件にのみ絶大なる精力を持つという学理は成立しないのである。
演者としては、ごまかしはきかない。現に、御落胤は痩せているのではないか、曽て出奔し去った五人の婿の如く、……すでにかなり痩せて、眼光はとろんとなり、唇は垂れ蒼ざめて、常に虚脱的なべそをかいて、漠然と天床や壁を見たり、どこかをぼりぼり引掻いたりしておる。