Classici giapponesi con furigana
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ずいひつ みやもとむさし
随筆 宮本武蔵
吉川 英治
Leggi 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.786 caratteri · 278 schermate
生憎と岡山を出た朝からばしゃばしゃと雨なのだ。ことしの五月下旬のことで、土地の乾利一氏や牧野融博士が心づよいことをいってくれるので、とにかく出かけてしまった自動車である。これが二時間行っても、三時間走っても、岡山市外からは畑と山と河ばかり。いやだんだん山と山ばかりになってくる。途中、和気とか佐伯とか周匝とかいう小さい村や部落を時々見るほかは、行けども行けどもといった感じである。近頃、大陸という概念が流行って、やたらに日本を小さがるが、山陽沿線から中国山脈の臍のあたりまで走ろうとしてみると、日本といえども一口にはいえない。
「いったい何時間ぐらいかかるんですか」
運転台に納まっている朝日の支局の人が、
「ま。五、六時間でしょうなあ」
と、軽くいう。
帰りは佐用郡から三日月へ出て龍野町を経、私線で姫路へという予定だが、これも四時間はかかろう。もう度胸はきまったようなものである。岡山で誰かが自動車へ入れてくれた初平の果物の籠など開く。倉敷でいちど降りてうどん屋で雪隠を借りる。雨はすこし霽りもようだが、低い山まで雲をかぶっている。蓑笠の人だの、荷駄馬だの、そろそろ道ばかりでなく時代も風俗も、武蔵の頃に溯って行くような気持になる。