Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ずいひつ みやもとむさし

随筆 宮本武蔵

吉川 英治

Leggi 随筆 宮本武蔵 (ずいひつ みやもとむさし) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 141.786 caratteri · 278 schermate

Aozora Bunko

欲しいと思った。何度も繰り拡げて、未練がましく見たものだったのだが、自分などの趣味につかう金ではとても届かない値だろうし、また、小向いでこんな物を取って、後で何ぞいざこざでもあったら嫌だし――などと思ったので、では倶楽部へ出るなら倶楽部で札を入れて貰うよ、とあっさり云って帰したものである。

が、それもつい忘れて数日経たぬうちに、私は関西へ旅行に立ってしまった。帰宅してからふと思い出し、あれの出る倶楽部はいつ頃かと、なお一脈の未練をもって電話して問合せてみたところ、もうきのうとか一昨日とか開札は終りました。へい、あの二天の画もさるお客がお取りになりまして――という返辞である。

まもなく郵便で開札の高値表が届いた。何気なく見てゆくと、宮本二天画、枯木鳴鵙図、五八〇円と落札値が出ている。謄写版のまちがいではないかと私は思っていた。で、その後その店員の顔を見た時、さっそく訊いてみると、やっぱり五百八十何円とやらいった。

それでも、その店員も、また美術倶楽部の札元たちも、決してそれが安かったとは、誰もいっていなかったものである。それ程、わずか十七、八年前には、武蔵の画には、一般の鑑賞家もまた、美術商も無関心で、たまたま、望む客があっても、むしろ物好きに思われるほどだった。