Classici giapponesi con furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Leggi 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 56.947 caratteri · 114 schermate
サウジ・アラビヤで石油を掘っている山下太郎氏が早朝にやって来られた。かつて中村直勝博士に依嘱してあつめたという厖大な楠氏史料は戦災で焼いてしまったがと、若干の史籍を私に贈られた。私の手もとにないのだけをありがたくいただいておく。太郎氏は以前から「全休庵楠系」の一孫といっていた人である。むかしからつやつやと赤みがかった光頭の持主だったが、ちっとも変らず、「もう二十年働いて、あと十年は遊ぶんだ」といって帰ったが、いったい幾歳になったのかしら。私本太平記などは飛行機の中でまとめて読むのだそうだ。アラビヤ石油を掘る楠氏の一孫と、しずかに鎌倉に住む吉田大納言の裔と、そして現実の近代日本と、こう照合してみると、日本という国はじつにおもしろい。
文化放送の“お便り有難う”に答えて、私本太平記のその一読者へ、私から後で菓子を送ったと週刊誌のコラム欄にあったが、あれは書物を贈ってあげたのである。その少年は両親がなく、昼は十二、三貫の綿糸をかつぐ肉体労働に従事し、夜は夜間高校の一学年に通学していて、読書が唯一の友だといっているだけあって、その質問が、いかにも的確で、私を衝いていたからだった。