Classici giapponesi con furigana
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おんぼうぼり
隠亡堀
国枝 史郎
Leggi 隠亡堀 (おんぼうぼり) di 国枝 史郎 (くにえだしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 4455 caratteri · 10 schermate
「こうなっちゃあ仕方が無いよ。迚も無理には嚇せないからね」お岩の声は憂鬱であった。
「あべこべに私達が嚇されます」小平の声も憂鬱であった。
「ねえ小平さん」
とお岩の声が云った。「もう祟るのは止めようよ」
「止むを得ませんね、止めましょう」
お岩の声が恥しそうに云った。
「妾、そこでご相談があるの。……濡衣を真実にしましょうよ」
「え」と云った小平の声には、寧ろ喜びが溢れていた。「あの、それでは、私達二人が」
「そうよ、夫婦になりましょうよ」
「大変結構でございまする」
「これには伊右衛門も驚くだろうね」
「こんな事でもしなかったら、彼奴は吃驚りしますまい。……だが最う私達は伊右衛門のことなど、これからは勘定に入れますまい」
此処で声が一時止んだ。
骨の軋む音がした。
板戸を隔てた二つの死骸がどうやらキッスをしたらしい。
ユラユラと板戸は動き出した。
「嬉しいのよ、小平さん」
「ああ私も、お岩さん」
ユラユラと板戸は流れ出した。
南無幽霊頓生菩提!
お岩さんとそうして小平さん、
彼等は正しく成仏した。
下流の方へ流れて行った。
鬼火だけが燃えていた。
真暗の夜を青い顔をして、上下左右に躍っていた。