Classici giapponesi con furigana
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がん
雁
田中 貢太郎
Leggi 雁 (がん) di 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 3848 caratteri · 8 schermate
「どうかしたの」
女房は何だか気になると云うさまであった。
「えらいことが出来た」と、久兵衛は吐息といっしょに吐き出すように云った。
「え、何が」と、女房は眼を光らした。
久兵衛は黄ろな小さな顔を曇らして、雁に財布を持って往かれた話をはじめた。
「お前さん、そんなことをして、どうするつもりだよ」と、女房は叱りつけるように云った。
「どうも、こうもない、俺はもう諦めた」と、声を落して云った。
「どう諦めたの」
「牢屋へ往くか、死んで申しわけするか、其の二つあいじゃ」
女房は黙り込んでもう何も云わなかった。
久兵衛は腕組をして考え込んだ。
其の翌朝のことであった。四日市に住んでいる漁師の一人は、伊勢の海へ漁に往くつもりで平生のように釣道具を持って家を出たが、海岸へ出ようとする路傍の沮洳地には、平生雁や鴨がいるので石を投げて当ると時たま其の肉に有りつくことができた。漁師は其の朝も三つ四つ石を拾って往って、土手の下の沮洳地を見ると、枯蘆の中に雁の群が餌をあさっていた。漁師はそれを見ると釣道具を置いて石を投げた。不意の襲撃に驚いて雁の群はどうと云う羽音を立てながら、明け放れたばかりの微靄のある空へ飛んだが、一羽の雁は石に傷ついたのか沮洳地の上を放れなかった。