Classici giapponesi con furigana
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あめ
雨
織田 作之助
Leggi 雨 (あめ) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.261 caratteri · 44 schermate
「まあ、田中の新ちゃんやないの。どないしてたんや」
もと近所に住んでいた古着屋の息子の新ちゃんで、朝鮮の聯隊に入営していたが、昨日除隊になって帰ってきたところだという。何はともあれと、上るなり、
「嫁はんになったそうやな。なぜわいに黙って嫁入りしたんや」
と、新ちゃんは詰問した。かつて唇を三回盗まれたことがあり、体のことがなかったのは、たんに機会の問題だったと今さら口惜しがっている新ちゃんの肚の中などわからぬお君は、そんな詰問は腑に落ちかねたが、さすがに日焼けした顔に泛んでいるしょんぼりした表情を見ては、哀れを催したのか、天婦羅丼を註文した。こんなものが食えるものかと、お君の変心を怒りながら、箸もつけずに帰ってしまった。そのことを夕飯のとき軽部に話した。
新聞を膝の上に拡げたままふんふんと聴いていたが、話が唇のことに触れると、いきなり、新聞がばさりと音を立て、続いて箸、茶碗、そしてお君の頬がぴしゃりと鳴った。声が先であとから大きな涙がぽたぽた流れ落ち、そんなおおげさな泣き声をあとに、軽部は憂鬱な散歩に出かけた。出しなに、ちらりと眼にいれた肩の線が何がなし悩ましく、ものの三十分もしないうちに帰ってくると、お君の姿が見えぬ。