Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ゆきのよる

雪の夜

織田 作之助

Leggi 雪の夜 (ゆきのよる) di 織田 作之助 (おださくのすけ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.221 caratteri · 23 schermate

Aozora Bunko

げんに眼の前にして、虚心で居れるわけもない。坂田は怖いものを見るように、気弱く眼をそらした。

それが昔赤玉で見た坂田の表情にそっくりだと、松本もいきなり当時を生々しく想い出して、

「そうか。もう五年になるかな。早いもんやな」

そして早口に、

「あれはどうしたんや、あれは」

瞳のことだ――と察して、坂田はそのためのこの落ちぶれ方やと、殆んど口に出かかったが、

「へえ。仲良くやってまっせ。照枝のことでっしゃろ」

楽しい二人の仲だと、辛うじて胸を張った。これは自分にも言い聴かせた。照枝がよう尽してくれるよって、その日その日をすごしかねる今の暮しも苦にならんのや。まあ、照枝は結局僕のもんやったやおまへんか。松本はん。――と、そんな気負った気持が松本に通じたのか、

「さよか。そらええ按配や」

と、松本は連れの女にぐっと体をもたせかけて、

「立話もなんとやらや、どや、一緒に行かへんか。いま珈琲のみに行こ言うて出て来たところやねん」

「へえ、でも」

坂田は即座に応じ切れなかった。夕方から立って、十時を過ぎたいままで、客はたった三人である。見料一人三十銭、三人分で……と細かく計算するのも浅ましいが、合計九十銭の現金では大晦日は越せない、と思えば、何が降ってもそこを動かない覚悟だった。