Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.621 caratteri · 25 schermate
海の上はすっかり明るくなっているのに、油灯がつけっぱなしになっている。そればかりではない。大帆も矢帆も小矢帆も、かんぬきがけにダラリと力なく垂れさがって、舵も水先もないように波のまにまに漂っている。
海面は青だたみを敷いたようないい凪なので……。
「なんでえ、妙ちきりんな船じゃねえか」
「菱垣船か」
「菱垣にしちゃア小さすぎる。それに、菱垣の船印がねえや」
「灘の酒廻船か」
「新酒船は八月のことでえ」
「土佐の百尋石船か」
「石船にしちゃア船腹が軽すぎらい」
「それにしても、なにをしてやがるンだろう。こんなところで沖もやいする気でもあンめえ。時化でもくらいやがって舵を折ったか」
十五日の朝から夕方まで子亥のかなり強い風が吹いたが、日が暮れるとばったりとおさまって、それからずっと凪つづきだった。
舳を突っかけながら、あらためてつくづくと眺めると、帆綱の元場にも水先頭場にも、綱の締場にも、まるきり人影というものがない。たるみきった帆綱がゆらゆらと風に揺れているばかり。
「船頭めら、くらい酔って寝くたばっていやがるのか。それとも、死に絶えたか」
艫に突っ立って、手びさしをして、さっきからジッとその船を眺めていた楫取の八右衛門、