Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.494 caratteri · 26 schermate
さすがに、苛立ったようなようすになって、髪油のほうに移ったが、三十二三種の髪油、匂油の中にも、やはり求める匂いはない。煉香、匂袋と試した。すると最後に取りあげたのは、つい、この四五日前、芝神明のセムシ喜左衛門の店で売りだした法朗西渡りのオーデコロンをもとにして作った『菊香水』という匂水。顎十郎が、蝋づけにした栓をぬいて、壜の口を鼻の下へ持っていったと思うと、たちまち、眼をかがやかして、
「おッ、これだッ」
と、大声で叫んだ。
顎十郎の濡衣は乾きました。なんでもないことだったが、このちょっとした思いつきが、抜きさしのならぬ危急から顎十郎を救ってくれた。女賊の小波がうっかり身につけていたこの匂いが動きのとれぬ証拠になったのである。
知ってか知らいでか、売りだしたばかりのこの『菊香水』を買ったのは、女ではほんの二三人。これもやはり天命か、女賊の小波は、セムシ喜左衛門のすぐ裏に住んでいて、一二年来の顔なじみのお顧客だった。
一日おいてそのあくる日、顎十郎は書状をもってお役御免をねがい出た。書状には……性来下司にして、口腹の欲に迷い、ウマウマ嵌められました段、まことに面目次第もこれなく、……と書いてあった。