Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 12.494 caratteri · 26 schermate
客を応待する心の深さもしのばれて、なかなか奥床しいのである。
さて、顎十郎は、そういう馥郁たる匂いを嗅ぎながら、ややしばらくのあいだ、文鳥のような優しい眼と睨めっこをしていた。いや、睨めっこといっては少し違うかも知れない。砕いて言えば、腰元の美しい眼ざしが、顎十郎の呆けた眼玉にしんねりと絡みついて、なかなか放さないのである。そういう工合なもんだから、顎十郎のほうも眼をそらすわけにはゆかない。いきおい、睨めっこのような工合になる。
気まずいようでもあり、また、そうとう楽しいようでもある。なんともむず痒い気持で、うっそりと腰元の顔をながめていると、このとき腰元は、手の甲を口にあてて、ほほほと艶に笑った。
「どうして、そのように、わたくしの顔ばかり眺めておいでになります」
なんとも言えぬ婀娜な上眼づかいで、チラと顎十郎の顔を睨んで、
「……どうせ、こんなお神楽のような顔でございますから、珍らしくてお眺めになるのでしょうけど、そんなにお見つめになっては嫌でございますわ」
顎十郎は、照れかくしに、いやア、と額に手をやって、
「いやどうも、こりゃア大敵だ。……どうしてなかなか、お神楽どころの段じゃアない。