Classici giapponesi con furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Leggi 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.674 caratteri · 36 schermate
「では、これほど、お願いをしても……」
「あんたも、くどい」
「どうでもお聞き入れくださらぬとあれば、やむをえぬ、……列にもどります。……ご無礼もうした」
うっすらと涙ぐんで、うなだれがちにトボトボと根津上のほうまでもどって行く。
そうするうちに、ようやく氷があがり、先頭のほうから順に氷室のほうへ動きだす。
氷室の前では、氷見の役人が十人ばかり金杓子を持って待っていて、順々に差しだす丼や蓋物におあまりの氷をすくっては盛りこんでやる。
「さあ、お次お次……」
貰ったものは喜んで、
「どうもお手かずさま、ありがとうございました」
と、礼を言い、丼を袖や袂でおおいながらいそいそと小走りにもどって行く。
くだんの浪人者は、気もそぞろのふうで、のびあがり、肩で息をしながら、雪をいただいて帰る人びとを羨ましそうに見おくっている。
門からあふれだし、弥生町の通りを根津までギッシリと四列につづいている人数だから、たいへん。なかなか順番がやって来ない。
それから四半刻、冷汗をかき、焦立つ胸をおさえながらジリジリと進んで行くうちに、どうやら氷室の近く。……あと四人で自分の順番がくる……。