Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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かぜ

風

壺井 栄

Leggi 風 (かぜ) di 壺井 栄 (つぼいさかえ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 38.702 caratteri · 78 schermate

Aozora Bunko

はじめてなので茂緒はぼうとなってしまった。いっさいの過去も未来も忘れた、夢のような時がたった。やがて、花嫁は恥かしさと自己嫌悪で少し不機嫌になり、同じように少しゆううつな花婿に抗議的な口調で、

「こんなことって、あるかしら。恥かし。」

「あたりまえですよ。」

「なんだか、へんな気もち。これでいいのかしら。」

「いいも悪いも、ないじゃないの。」

なんというかんたんな解決であろう。それは長い年月のもたもたが一瞬に晴れたようなふしぎさだった。ようやく気もちの平静をとりもどしてみると、家の中はだだびろく、バスケット一つが嫁入道具だった。

「金策がうまくゆかなくてね、下宿へ荷物とりにいけないんだ。四五日さきにする。」

修造は照れくさそうに頭をかいた。ほんとうの下宿というのはその町名のめずらしさで、茂緒もおぼえている戸塚源兵衛の方で、そこで食事まで止められた彼は、本郷の友人の部屋に居候をしていたのだという。茂緒はおどろき、あきれ、すぐにはものも言えなかった。

「大丈夫だよ。結婚したからにはぼく、すぐ仕事さがすからね。」

「わたしも、仕事さがしますわ。ふたりで働いて、ちゃんと暮しましょうね。