Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しょくま

食魔

岡本 かの子

Leggi 食魔 (しょくま) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 36.911 caratteri · 74 schermate

Aozora Bunko

人中に揉まれて臆し心はほとんど除かれている彼に、この衷心から頭を擡げて来た新しい慾望は、更に積極へと彼に拍車をかけた。彼は高飛車に人をこなし付ける手を覚え、軽蔑して鼻であしろう手を覚えた。何事にも批判を加えて己れを表示する術も覚えた。彼はなりの恰好さえ肩肘を張ることを心掛けた。彼は手鏡を取出してつくづく自分を見る。そこに映り出る青年があまりに若く美しくして先生と呼ばれるに相応しい老成した貫禄が無いことを嘆いた。彼はせめて言葉附だけでもいかつく、ませたものにしようと骨を折った。彼の取って付けたような豹変の態度に、弱いものは怯えて敬遠し出した。強いものは反撥して罵った。「なんだ石刷り職人の癖に」そして先生といって呉れるものは料理人だけだった。

「与四郎は変った」「おかしゅうならはった」というのが風雅社会の一般の評であった。彼の心地に宿った露草の花のようないじらしい恋人もあったのだけれども、この噂に脆くも破れて、実を得結ばずに失せた。

若者であって一度この威猛高な誇張の態度に身を任せたものは二度と沈潜して肌質をこまかくするのは余程難しかった。鼈四郎はこの目的外れの評判が自分のどこの辺から来るものか自分自身に向って知らないとはいい徹せなかった。