Classici giapponesi con furigana
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ぐるめにおくる
食魔に贈る
岡本 かの子
Leggi 食魔に贈る (ぐるめにおくる) di 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9619 caratteri · 20 schermate
この中に五百グラムの小麦粉と、百五十グラムの粉砂糖と、一摘みの塩を入れて攪きまぜる。最後にシャンパン半デシリットルを加えモスリンの布で漉す。それによく攪拌した、クリーム三デシリットルを加える。これを黄金色に平に焼いて料理場で用意して置く。その柔い生乾きの煎餅に似たものを、食後の客の前に出してアルコールランプの皿鍋が程よく焼けると、その中でシャンパンとリキールグラシ、マルニエ、コルドン、ルージュを注ぎ込んだオレンジのバタで、料理人が揚げる。夢のように甘い、南欧の春のオレンジの香がにおい立つ。客は料理人の得意の手際を見乍ら揚げるそばから食べるのがつくづくうまい。
芝居の始りにもう一時間という時間になり右の部屋も左の部屋も相当客が立て込んで来た。音楽はだんだん弾んだ曲に入る。料理場は口を引結んで弾丸を矢継ぎ早やに詰め代える塹壕の光景になった。
この忙しさに一向頓着なく料理場の片隅に一つのストーヴと一つの料理卓を控えて七十近い老翁がいる、彼のこまかい料理の運びは殆んど自然のように遅速は無い。ときどき味を試す為に瞑目する。周囲の忙しい人達は老翁の存在を気にかけ無い。