Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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きがちたいをあるく

飢餓地帯を歩く

下村 千秋

Leggi 飢餓地帯を歩く (きがちたいをあるく) di 下村 千秋 (しもむらちあき) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.478 caratteri · 31 schermate

Aozora Bunko

(今、青森県下の銀行の殆んどは、支払停止である)で金の融通が全く利かなくなり、同時に商売はぱったりと行き詰ってしまった。父親は最早半分絶望状態になった。そして、各方面の不義理はそのままにして、単身、青森市へ飛び出してしまった。

父親は、埠頭の仲仕となった。しかし、さなきだに頼み人がない所へ、見ず知らずの父親が入り込んでも、まるで仕事にありつけなかった。父親は毎日、雪風に吹かれながら、埠頭の倉庫のかげで、弁当を食うだけのことしかしなかった。そうして、やがてその弁当も持って行けない日が来た。或る日である。父親は、空腹のあまり、仲間の弁当を盗んで喰った。それがすぐ発見され、父親は、仲間のものから袋叩きにされた。そして足腰も立てぬまでに負傷した。

父親は、木賃宿の一室に、一人棄てられたように寝ていた。

「それから四日目か五日目に、お父つァんは死んだの。怪我のために死んだのか、干死んでしまったのか、それはだれも知らない……」

娘は、最後に、津軽弁でこう言ったのである。

私は、これで筆を擱こう。餓死線上にうめいている人々をさんざん書いた後に、こんな話を持ち出すのは、読者も堪らないだろうし、書く私は尚更堪らないから。