Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

こうすいしんし

香水紳士

大阪 圭吉

Leggi 香水紳士 (こうすいしんし) di 大阪 圭吉 (おおさかけいきち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 7752 caratteri · 16 schermate

Aozora Bunko

クルミさんは、もうジッとしていられなくなった。が、さりとて声を立てたり動いたりすることはとても出来ない。

すぐ眼の前の新聞記事によれば、犯人は凶器を持っていたとあるではないか! うっかり声でも立てたなら、どんなことになるかも知れない。

「こっそり車掌さんに知らせようか知ら」

しかし、そんなことをしたとて、無駄である。相手がそのように恐しい男では、却って騒ぎ立てて、平和な旅客たちの間に、間違いでも起きたなら、それこそ大変である。いやなによりも、もうクルミさんは、石のようになってしまって、出したくても声も出せなければ、動きたくても、身動きも出来ないのだった。永い時間がたったようだ。

ジッとしたまま、こわごわ、もう一度新聞を見る。

「沈着なる宿直員の観察」

という見出しが、ふと目についた。すると、少しばかり、クルミさんの心の中に、明るいものがみつかった。

「そうだ、落ちつかなければいけない」

われと己をはげまして、思い切って紳士の顔を見る。

すっかり居睡りが、本式になったらしい。

列車は、もういつの間にか、幾つかの駅を通過して、だんだん国府津の町へ近づいて行くらしい。