Classici giapponesi con furigana
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かけおち
駈落
佐左木 俊郎
Leggi 駈落 (かけおち) di 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 6287 caratteri · 13 schermate
六
六社様の祭日の九時頃、菊枝は、朝仕事が済むと次の間で、母の嫁入りの時のだった古箪笥から、二三枚の木綿の着物を取り出して、それに顔を押し当て泣いていた。母の位牌の前には、線香が悠長に燻っていた。
そこへ、婆さんが、二つの新聞紙包みを持って、痛む足を曳きずるようにしてはいって来た。
「なんだけな? 菊枝! 泣いだりなんかして……父つあんがこりゃ……」
菊枝は、着物の上に突っ伏したまま顔を上げなかった。
「なあ、菊枝。さあ、泣いだりなんかしねえでや。」
菊枝の胸の中には、不満な気持ちが満ち満ちていた。彼女は、その幾分かを祖母の前に吐き出そうとして顔を上げた。眼が赤く腫れあがっていた。
「こりゃ菊枝。父つあんが昨晩買って来たのだぞ。ほら、水色の蝙蝠。ほれから、この単衣も……両方で十三円だぢぞ。」
婆さんは柔和な微笑を浮かべて、こう述べたてながら二つの包みをほどいた。素樸なメリンスの単衣であった。濃い水色に、白い二つの蝶を刺繍したパラソルだった。
「ああ、いいこと!」
菊枝は思わず言って、そのパラソルを自分の手に取った。
「この水色の蝙蝠、高えもんだぢな。