Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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げかしつ

高野聖

泉 鏡花

Leggi 高野聖 (げかしつ) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 51.264 caratteri · 104 schermate

Aozora Bunko

「どなたでしたか、いっこう存じません」

白糸は片頬笑みて、

「あれ、情なしだねえ。私は忘れやしないよ」

「はてな」と馭者は首を傾けたり。

「金さん」と女はなれなれしく呼びかけぬ。

馭者はいたく驚けり。月下の美人生面にしてわが名を識る。馭者たる者だれか驚かざらんや。渠は実にいまだかつて信ぜざりし狐狸の類にはあらずや、と心はじめて惑いぬ。

「おまえさんはよっぽど情なしだよ。自分の抱いた女を忘れるなんということがあるものかね」

「抱いた? 私が?」

「ああ、お前さんに抱かれたのさ」

「どこで?」

「いい所で!」

袖を掩いて白糸は嫣然一笑せり。

馭者は深く思案に暮れたりしが、ようよう傾けし首を正して言えり。

「抱いた記憶はないが、なるほどどこかで見たようだ」

「見たようだもないもんだ。高岡から馬車に乗ったとき、人力車と競走をして、石動手前からおまえさんに抱かれて、馬上の合い乗りをした女さ」

「おお! そうだ」横手を拍ちて、馭者は大声を発せり、白糸はその声に驚かされて、

「ええびっくりした。ねえおまえさん、覚えておいでだろう」

「うむ、覚えとる。そうだった、そうだった」

馭者は脣辺に微笑を浮かべて、再び横手を拍てり。