Classici giapponesi con furigana
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まぞう
魔像
林 不忘
Leggi 魔像 (まぞう) di 林 不忘 (はやしふぼう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 131.494 caratteri · 260 schermate
「荷物を忘れちゃいけないよ」
「この通り、シッカリ抱いていまさァ」
毎度ありがとう。どうぞおしずかに……茶汲み婆さんの声に送られて、ふたりも、腰かけを離れた。
やきもち坂を登る。脇坂様のお屋敷へ。
七
「ほホゥ、筆幸から献上物とナ」
登城をしない日は、退屈な一日だ。
市ヶ谷やきもち坂の甲良屋敷である。
西丸御書院番頭脇坂山城守は、ここお上やしきの奥まった庭を、ブラブラ散歩していた。
お力士さんのように肥ったからだに、紋服の突き袖が似合った。泉水のまわりを歩いているのだ。いい天気だ。金いろの水のような日光が空間を占めて、空は、高く蒼い。草は、みどりの色を増して来ているのだ。山城守は、それが特徴の、面のように無表情な顔を据えて、さっきから、築山の横の同じところをいったり来たりしていた。
空は晴れても、山城守は、気が重いのだった。
気が重い――無理もない。
ところは柳営だ。時は元旦だ。あんな事件のあったのは、山城守の責任なのだ。監督不行届きなのだ。よく切腹を仰せ付けられなかった。よく閉門謹慎で済んだ。が、表面はそれで済んでいるが、内実、山城守のいのちは、兇刃神尾喬之助の逮捕一つにかかっているのだ。