Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
うごくところを狙って、突き刺そうとすると、松兵衛の悲鳴にハッとおどろいて手を引いた。
その隙に、お十夜も、大魚の腹を切り破って出るように、雨の中へころがりだす。
雨は帆布を叩いて、滝のように白くあふれていた。さらに、空へ、奈落へ、ゆれかえる合の動揺!
目もあけられぬ雨! 疾風!
「うぬッ」
「おのれッ」
と互に、剣をかまえて、斬ろうとし、刺そうとはするが、自然の力に妨げられて、技も気念もほどこすによしがない。
帆は切り裂かれても、船は運よく、由良の岬にも乗りあげずに、鯉突の鼻をかわして、狂浪に翻弄されながら外海へつきだされていた。
帆柱にしがみついて、しばらく様子を眺めていた周馬も、いよいよつのる疾風に、ともすると体ぐるみ吹ッ飛ばされそうになるので、
「あっ、堪らねえ」
と、辷り落ちてきた。
そこに、お綱が、船暈いの顔を青ざめさせて、うッ伏していた。だが、ドンと降りてきたかれの足音に、ハッと顔をあげて、帯の小脇差に手をかけた。
世阿弥のかたみ――新藤五国光の刀へ。
と、周馬は、
「ウム!」と叫んで、足をあげた。
だが――お綱の肩を蹴とばしたとたんに、かれの体も、意気地なくもんどり打って、四、五間向うへ突ンのめっている。