Classici giapponesi con furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(三)
吉川 英治
Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate
次の山容をあおぎ、谷をのぞいて、森々たる喬木林の間に、合歓の木の多いのにも驚いた。和州多武の峰にのぼった折に、この花の多いと思った記憶はあるが、かくも幽邃な光線と深い冷気のうちに塵もとめぬ神秘さをもった花とは違ったように思われた。
人を殺害しにゆく人間にも、山は冷寂な反省と幽美な感激を与えている。けれど人間はなかなかそれに浸りきらず、邪念なかなかそれには消えない。
すでに四人は、大刀に反りを打たせて踏み登ってくる。
世阿弥の生命は風前のともし灯。
さっき、かれがふと意識した脈音のみだれは、この兇事の来たることを肉体の持主に予察させた霊感の微妙であったろうか。
「死ぬナ、おれは」
不思議にみずからこういった。
しかし、人間にさほど霊の感知がありうるならば、父子同じ血をもっているお綱の血のうちへ、世阿弥の今搏つ脈音がひびいてゆかないものだろうか。
深夜、廃寺の方丈から、ふたたび徳島海部の同心に追われた弦之丞とお綱は、あれから、深林、峡谷をよじのぼって、剣山の裏伝いへかかったことは想像に難くない。
それは弦之丞が、医王山の境内でも廃寺の折でも隙を見るや一散に逃げ去ったことであきらかに知れている。