Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

Leggi 鳴門秘帖(三) (なるとひちょう) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 261.216 caratteri · 521 schermate

Aozora Bunko

秘帖にかわる別な物が、かれの指先にゴソとさわった。

壺の底には巻紙がまるめ込んであった。

何か? と孫兵衛、ズルズルと畳へ長くひき伸ばしてみると、どうだろう! まるで悪戯書きをしたような大きな文字で、墨黒々、こんな文句がなすってある。

あわれむべき小悪よ!

汝はきょうまで余の手先に踊らされていた悪魔の子分だ!

ういやつ!

秘帖は貰ってゆく!

おれは元来阿波を見物にきた閑人ではない!

一角はこの嘲笑と徒労を知らずに死んだ幸福者!

さらば、余は急がねばならぬ、帰府のゆくてには出世の栄座と恋人と新しき屋敷とが待っているので!

去るにのぞんで名乗っておこうか! おぼえておけ! 大府駿河台墨屋敷の隠密組旅川周馬。

庭前の大石にあたって色鍋島の大花瓶、ガラガラッと粉になって砕けた。真ッ青になったお十夜が、無念のあまり投げつけた力に――。

「岡崎の港だ!」

痛烈な響きを弾みにして、かれは吠えて立った。

だがまた、ふと不審を起こして、巻紙の一端をつかんでみる。

見ると、巻紙には筋目の痕がついてある。だのに、鳥の巣のように丸めこんであったのはなぜだろう?

と怪しむとひとしく、またかれの錯覚を起こしてくるのは、帰った途端に、この部屋から消え去った謎めいた虚無僧の幻影。