Classici giapponesi con furigana
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ばんがり
鷭狩
泉 鏡花
Leggi 鷭狩 (ばんがり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.763 caratteri · 22 schermate
渠は壁に掴った。
掌がその壁の面に触れると、遠くで湯の雫の音がした。
聞き澄すと、潟の水の、汀の蘆間をひたひたと音訪れる気勢もする。……風は死んだのに、遠くなり、近くなり、汽車が谺するように、ゴーと響くのは海鳴である。
更に遠く来た旅を知りつつ、沈むばかりに階段を下切った。
どこにも座敷がない、あっても泊客のないことを知った長廊下の、底冷のする板敷を、影のうように、我ながら朦朧として辿ると……
「ああ、この音だった。」
汀の蘆に波の寄ると思ったのが、近々と聞える処に、洗面所のあったのを心着いた。
機械口が緩んだままで、水が点滴っているらしい。
その袖壁の折角から、何心なく中を覗くと、
「あッ。」と、思わず声を立てて、ばたばたと後へ退った。
雪のような女が居て、姿見に真蒼な顔が映った。
温泉の宿の真夜中である。
二
客は、なまじ自分の他に、離室に老人夫婦ばかりと聞いただけに、廊下でいきなり、女の顔の白鷺に擦違ったように吃驚した。
が、雪のようなのは、白い頸だ。……背後むきで、姿見に向ったのに相違ない。燈の消えたその洗面所の囲が暗いから、肩も腰も見えなかったのであろう、と、疑の幽霊を消しながら、やっぱり悚然として立淀んだ。