Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ばんがり

鷭狩

泉 鏡花

Leggi 鷭狩 (ばんがり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 10.763 caratteri · 22 schermate

Aozora Bunko

……宵に鯊を釣落した苦き経験のある男が、今度は鱸を水際で遁した。あたかもその影を追うごとく、障子を開けて硝子戸越に湖を覗いた。

連り亘る山々の薄墨の影の消えそうなのが、霧の中に縁を繞らす、湖は、一面の大なる銀盤である。その白銀を磨いた布目ばかりの浪もない。目の下の汀なる枯蘆に、縦横に霜を置いたのが、天心の月に咲いた青い珊瑚珠のように見えて、その中から、瑪瑙の桟に似て、長く水面を遥に渡るのは別館の長廊下で、棟に欄干を繞した月の色と、露の光をうけるための台のような建ものが、中空にも立てば、水にも映る。そこに鎖した雨戸々々が透通って、淡く黄を帯びたのは人なき燈のもれるのであろう。

鐘の音も聞えない。

潟、この湖の幅の最も広く、山の形の最も遠いあたりに、ただ一つ黒い点が浮いて見える。船か雁か、※か、ふとそれが月影に浮ぶお澄の、眉の下の黒子に似ていた。

冷える、冷い……女に遁げられた男はすぐに一すくみに寒くなった。一人で、蟻が冬籠に貯えたような件のその一銚子。――誰に習っていつ覚えた遣繰だか、小皿の小鳥に紙を蔽うて、煽って散らないように杉箸をおもしに置いたのを取出して、自棄に茶碗で呷った処へ――あの、跫音は――お澄が来た。