Classici giapponesi con furigana
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くろいてちょう
黒い手帳
久生 十蘭
Leggi 黒い手帳 (くろいてちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.026 caratteri · 38 schermate
布哇のれいの後援者の漁場が大海嘯にやられ、一夜にして彼自身も無一文になってしまった。不本意ながら、援助が出来なくなったといってきた。寝耳に水とは真にこのことだ。ちょうど半年分の送金が届く定例の月で、それを待ちかねていたくらいだから手元には千法とちょっとしか残っていない。どんなに倹約したって二タ月ともちはしない。するとそのあとはどうなるだろう。
「夫は歌をうたうほかなにひとつ出来ない能なしだし、あたしはミシンもタイプライターもだめなんです。パパがいやしい仕事だといってやらしてくれなかったのよ。アメリカならどうにかなるでしょうが、こんなせち辛い巴里じゃ日本人の働く口なんか、あるわけはないんだし、友達はみんなじぶんのことだけで精一杯で、他人のことなんかにかまっていられない、貧乏なひとたちばかりなんだから、いずれは餓死するか自殺するか、あたしたちの運命はもうきまったようなもんですわ」
いかにもしんみりと口説くと、同情を強要するような一種雅致のある泣きかたをしてみせた。つまるところは助けてくれというわけなのであろうが、こちらにはそんな気がない。聞くだけ聞いてひき退ってきた。