Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くろゆり

黒百合

泉 鏡花

Leggi 黒百合 (くろゆり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 78.148 caratteri · 154 schermate

Aozora Bunko

「遅くなりまして済みませんでした、拓さん。」

と判然、それも一言ごとに切なく呼吸が切れる様子。ありしがごとき艱難の中から蘇生って来た者だということが、ほぼ確かめらるると同時に、吃驚して、

「おお、お雪か、お前! そして千破矢さんはどうした、」と数分時前、夢に渠と我とともにあった少年の名をいった。

お雪はその時答えなかった。

理学士は繰返してまた、

「千破矢さんはどうしたんだ、」と、これは何心なく安否を聞いたのであったが、ふと夢の中の事に思い当った。お雪の答が濁ったのを、さてはとばかり、胸を跳らして口を噤む。

しばらくして、

「送って来て下さいましたよ。」

「そして※(疑問符感嘆符、1-8-77)」

「あの、お向の荒物屋に休んでいらっしゃいます。」

「そうか、」といったが、我ながら素気なく、その真心を謝するにも、怨をいうにも、喜ぶにも、激して容易くは語も出でず。あまりのことに、活きて再び家に帰って、現のごとき男を見ても直ぐにはものも言懸けなかった、お雪も同じ心であろう。ものいう目にも、見えぬ目にも、二人斉しく涙を湛えて、差俯向いて黙然とした。人はかかる時、世に我あることを忘るるのである。