Classici giapponesi con furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Leggi 黒百合 (くろゆり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 78.148 caratteri · 154 schermate
ただ風変りな貴公子だとばかり思ってはいるが、――その時お雪が島野に引出されたのを見て、納戸へ転込んで胸を打って歎くので、一人の婦人を待つといって居合わせたのが、笑いながら駆出して湯の谷から救に来たのであった。
二十九
子爵千破矢滝太郎は、今年が十九で、十一の時まで浅草俵町の質屋の赤煉瓦と、屑屋の横窓との間の狭い路地を入った突当りの貧乏長家に育って、納豆を食い、水を飲み、夜はお稲荷さんの声を聞いて、番太の菓子を噛った江戸児である。
母親と祖父とがあって、はじめは、湯島三丁目に名高い銀杏の樹に近い処に、立派な旅籠屋兼帯の上等下宿、三階造の館の内に、地方から出て来る代議士、大商人などを宿して華美に消光していたが、滝太郎が生れて三歳になった頃から、年紀はまだ二十四であった、若い母親が、にわかに田舎ものは嫌いだ、虫が好かぬ、一所の内に居ると頭痛がすると言い出して、地方の客の宿泊をことごとく断った。神田の兄哥、深川の親方が本郷へ来て旅籠を取る数ではないから、家業はそれっきりである上に、俳優狂を始めて茶屋小屋入をする、角力取、芸人を引張込んで雲井を吹かす、酒を飲む、骨牌を弄ぶ、爪弾を遣る、洗髪の意気な半纏着で、晩方からふいと家を出ては帰らないという風。