Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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くろゆり

黒百合

泉 鏡花

Leggi 黒百合 (くろゆり) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 78.148 caratteri · 154 schermate

Aozora Bunko

であることを、あらかじめここに断っておかねばならぬ。

さて、滝太郎がその可恐しい罪を隠蔽しておく、温泉の口の辺で、精細式のごときモウセンゴケを見着けた目は、やがてまた自分がそこに出没する時、人目のありやなしやを熟と見定める眼であるから、己の視線の及ぶ限は、樹も草も、雲の形も、日の色も、従うて蟻の動くのも、露のこぼるるのも知らねばならないので、地平線上に異状を呈した、モウセンゴケの作用は、むしろ渠がいまだかつて見も聞きもしなかったほど一層心着くに容易いのであった。あたかも可し、さる必用を要する渠が眼は、世に有数の異相と称せらるる重瞳である。ただし一双ともにそうではない、左一つ瞳が重っている。

そのせいであったろう。浅草で母親が病んで歿る時、手を着いて枕許に、衣帯を解かず看護した、滝太郎の頸を抱いて、(お前は何でもしたいことをおしよ、どんなことでもお前にはきっと出来るのだから、)といったッきり、もう咽喉がすうすうとなった。

その上また母親はあらかじめ一封の書を認めておいて、不断滝太郎から聞き取って、その自分の信用を失うてまで、人の忌嫌う我児を愛育した先生に滝太郎の手から託さするように遺言して、(私が亡くなった後で、もしも富山からだといって人が尋ねて来たら、この手紙を渡して下さい。