Classici giapponesi con furigana
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つづみくらべ
鼓くらべ
山本 周五郎
Leggi 鼓くらべ (つづみくらべ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8577 caratteri · 18 schermate
老人の顔が笑いかけて呉れるように思え、今まで感じたことのない、新しいよろこびが胸へ溢れて来た。そして自分の体が眼に見えぬいましめを解かれて、柔かい青草の茂っている広い広い野原へでも解放されたような、軽い活々とした気持でいっぱいになった。
――早く帰って、あの方に鼓を打ってあげよう、この気持を話したら、きっとあの方はよろこんで下さるに違いないわ。お留伊はそのことだけしか考えなかった。
「どうしたのです」
舞台から下りて控えの座へ戻ると、師匠はすっかり取乱した様子で詰った。「……あんなに旨く行ったのに、なぜやめたのです」
「打ち違えたのです」
「そんな馬鹿なことはない、いやそんな馬鹿なことは断じてありません、あなたはかつてないほどお上手に打った。わたくしは知っています、あなたは打ち違えたりはしなかった」
「わたくし打ち違えましたの」
お留伊は微笑しながら云った。「……ですからやめましたの、済みませんでした」
「あなたは打ち違えはしなかった、あなたは」
仁右衛門は躍気となって同じことを何十回となく繰返した。
「……あなたは打ち違えなかった、そんな馬鹿なことはない」