후리가나로 읽는 일본 고전
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そのきどをとおって
その木戸を通って
山本 周五郎
山本 周五郎의 その木戸を通って(そのきどをとおって)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 22,448자 · 44화면
正四郎は黙って、妻のようすを見まもった。耳の中で血がどっどっと脈搏ち、口をあかなければ呼吸ができなかった。ふさは歩きだした。梅林のほうへ向って、一歩ずつ拾うように、――正四郎も立ちあがり、はだしのまま妻のうしろから跟いていった。二十歩ばかりゆくとふさはまた立停った。
「これが笹の道で」とふさは呟いた、「そしてこの向うに、木戸があって――」
正四郎がそっと囁いた、「さあ、それからさきを思いだすんだ、さあ、その木戸の外はどうなっている」
ふさは身動きもせず、口をつぐんだままじっと立っていた。
「ふさ――」彼はそっと妻の肩に手をかけ、低い囁き声で云った、「よく考えてごらん、それは自分の家なのか、おまえの家の庭なのか、木戸を出るとどこへゆけるんだ」
ふさはゆらっとよろめき、持っていた銚子を落した。正四郎は両手で妻を支えた。するとふさは吃驚したように良人を見て、躯をまっすぐにした。
「わたくしどうかしたのでしょうか」
いつもの顔、いつもの眼に返っていた。
「いまおまえは昔のことを思いだそうとしていたんだ」と彼は云った、「私が云うから眼をつむってごらん」
「いいえ」ふさはかぶりを振った、「わたくしこのままで仕合せですの、昔のことなど思いだしたくはございません」