후리가나로 읽는 일본 고전
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それからそれ
それからそれ
宇野 浩二
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 4,848자 · 10화면
揺がず、洵に唐人の山水画、威武遠く富士に迫れども、大霊の鍾まるところ、謙りて之を凌がず、万山富士にはその徳を敬し、鎗ヶ嶽には其威を畏る。(後略)」
『日本風景論』、『日本山水論』、『日本アルプス』その他の山岳書を読み耽った頃、私は『山恋ひ』という三分真実七分空想の中篇小説を書いた。その表題の脇に
北に遠ざかりて
雪白き山あり。
――小島烏水著「日本アルプス」の中の言葉
と題註のようなものを添えた。これは前記『日本アルプス』の中の何の辺に出ている言葉であるか、何分今から十二三年前の作であるから、引用した私にも分らない、覚えていない。
ところが、最近、ふと『平家物語』を繙いた時、巻十の「海道下り」の終の方に、一谷で生捕された平重衡が、梶原景時に護送されて鎌倉に下向する途中、小夜の中山を通り過ぎるところで、
「……宇津の山辺の蔦の道、心ぼそくも打越えて、手越を過ぎ行けば、北に遠ざかりて、雪白き山あり、問へば甲斐の白根という。その時、三位中将落つる涙を抑へつつ、
惜しからぬ命なれども今日までにつれなき甲斐の白根をも見つ」
という一節を読み、十二三年前に作った小説の題の脇に添えた文句の出所を初めて知った訳である。