후리가나로 읽는 일본 고전
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だいこん
だいこん
久生 十蘭
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N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 153,732자 · 303화면
五流ぐらいの、アメリカのどこかの港にでもいるような感じだった。
税関の構内を出て歩道を歩いて行くと、街路樹の前に自動車の骨組みに幌をつけたような、腰のあがったみょうな小型自動車がずっとむこうまで一列に並んでいる。大通はへんにひろびろしていて、あたしのほか日本人は一人も歩いていない。軍艦でダンスをしているうちに日本人がみな死に絶え、あたしだけが生き残ったのではないかというような気がする。夕風が吹きだし、たださえゆらゆらするフロックの裾が、派手にひろがったり舞いあがったりする。それがみょうにもの悲しい。
税関の正面の入口を入ろうとすると、思いがけないところに海兵隊が立っていて、きばった顔であたしの前へ立ちふさがった。
「おい、君」
いつも機嫌のいい新教徒も、ときにこんな顔をすることもあるんだ。あたしが挨拶した。
「ヘイ・ジョウ」
海兵隊が白い歯をみせてニヤリと笑った。
「どこへ」
「GHQにいる友達に逢いに行く」
「日本のモースーメがGHQの建物に立入ることはタブウだ。悪く思うなよ」
ジョイスは半日の人間の頭の中を十万語ぐらいにひきのばして見せたが、税関のGHQからニュウグランド・ホテルまでの十分間の頭の中を書きつけたら、〈ユリシーズ〉の十倍ぐらいの長さになるにちがいない。