후리가나로 읽는 일본 고전
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せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる
一九三二年の春
宮本 百合子
宮本 百合子의 一九三二年の春(せんきゅうひゃくさんじゅうにねんのはる)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 21,942자 · 44화면
一
三月二十九日の朝、私は塩尻駅前の古風な宿屋で目をさました。雪が降っていた。この辺では、宿屋などは夜じゅう雨戸をしめず、炬燵のある部屋の障子をあけると、もういきなり雪がさかんに降っている内庭が眺められる。松の枝につもる雪を見ながら朝飯をしまって、わたしはたった一つの荷物の小カバンを片手に下げ、外套の襟を高くたてて雪の中を駆けてステーションへ行った。宿屋は駅からそんなに近いのであった。宿屋の主人が差さない傘を手にもってやはり後から駆けて来、汽車が動き出したとき、
「じゃ失敬します、また来て下さい」
と右手にすぼめたままもっている傘をふって挨拶した。この人は宿屋をしているが塩尻町の全農に関係し、作家同盟から出ている文学新聞なども読んでいる。前日塩尻町に講演会があり、そこへ自分も来ていたのだ。
下諏訪までゆく三等の汽車の窓から、雪ふりの山々が近く見える。一面白く雪が積り、黒く樹木の見える信州の山は、自分にハバロフスク辺の鉄道沿線の風景を思い出させた。
モスクワから帰って来る時、丁度こんな風にたえ間なく雪が降り、黒い木が猪の背中の毛のように見える沿海州の山の間を通過するシベリア鉄道の車室で、わたしはタイプライタアを打っていた。