일본어 읽기 연습

후리가나로 읽는 일본 고전

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いっぽんのはな

一本の花

宮本 百合子

宮本 百合子의 一本の花(いっぽんのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.

N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 26,709자 · 55화면

아오조라 문고

「どうぞ」

と云う代りに黙って下げた。

自分の腕に自信があって、全然情に絆されることなく使用人を使うし、算盤を弾くし、食えない生れつきは商売を始めた親父より強そうな嘉造を見ると、朝子はいつも一種の興味と反感とを同時に覚えた。朝子は、団栗眼の十二三の給仕が揃えてくれた草履に換え、右手の壁について階段を登った。

階段は、粗末な洋館らしく急で浅い。朝子の長い膝が上の段につかえて登り難いこと夥しかった。片手に袱紗包をかかえ、左手を壁につっ張るようにし、朝子は注意深く一段一段登って行った。三分の二ほど登ると社長室の葭戸が見えた。葭戸を透して外光が階段にもさして足許が大分明るくなった。

何の気もなく、朝子はバタバタと草履を鳴らし若い女らしく二三段足速に登った。

その途端に、さっと葭戸が開き、室内から十七ばかりの給仕女が、とび出したとしか云えない急激な動作で踊り場の上へ出た。その娘は素早く朝子をかわして、ドタドタドタ、階下へ駈け降りた。

朝子が思わずもう誰も見えない暗い階段の下の方を見送っていると、あから顔の社長は、葭戸と平行に、書棚でも嵌め込む積りか壁に六尺に二尺程窪みがついている、その窪みの処から、悠っくりさり気なく室の中央へ向って歩き出した。