후리가나로 읽는 일본 고전
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
織田 作之助의 世相・競馬(しがつばか)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 19,112자 · 39화면
四階でエレヴェーターを降りると、エレヴェーターのすぐ前が改造の校正室だった。
はいって行くと、きかぬ先に、
「武田さん来てますよ」
と、Aさんが言った。
「えッ? どこに……」
「向うの部屋に罐詰中です」
教えられた部屋は硝子張りで、校正室から監視の眼が届くようになっていた。
武田さんは鉛の置物のように、どすんと置かれていた。
ドアを押すと、背中で、
「大丈夫だ。逃げやせんよ。書きゃいいんだろう」
しかし振り向いて、私だと判ると、
「――なんだ、君か。いつ来たの?」
「罐詰ですか」
「到頭ひっくくって連れて来やがった。逃げるに逃げられんよ。何しろエレヴェーターがきゃつらの前だからね。――ああ眠い」
欠伸をして、つるりと顔を撫ぜた。昨夜から徹夜をしているらしいことは、皮膚の色で判った。
橙色の罫のはいった半ぺらの原稿用紙には「時代の小説家」という題と名前が書かれているだけで、あとは空白だった。私はその題を見ただけで、反動的ファッショ政治の嵐の中に毅然として立っている小説家の覚悟を書こうとしている評論だなと思った。このような原稿を伏字なしに書くには字句一つの使い方にも細かい神経を要する。