후리가나로 읽는 일본 고전
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
織田 作之助의 世相・競馬(しがつばか)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 19,112자 · 39화면
その部屋はアパートの裏口からはいったかかりにあって、食堂の炊事場と隣り合っていた。床下はどうやらその炊事場の地下室になっているらしく、漬物槽が置かれ、変な臭いが騰ってきてたまらぬと佐伯は言っていた。食堂の主人がことことその漬物槽の石を動かしている音が、毎朝枕元へ響いて来る。漆喰へ水を流す音もする。そのたびに湿気が部屋へ浸潤して来るように思われたと言う。それがなくても、いったいが湿気の多いじめじめした部屋であった。日の射さないせいもあろう。年中敷きっぱなした蒲団をめくると、青い黴がべったりと畳にへばりついていた。銀色の背中をした名も知れぬ虫がさかんに飛びまわる。蜘蛛の巣は勿論である。掃除をしたことがないのだ。アパートの女中が見兼ねて掃除をしてやろうと言っても、なにか狼狽して断ってしまうらしい。私はいつ訪ねてもきっと足袋の裏と鼻の穴を黒くして帰った。猫の額のような中庭に面して小窓がひとつきりあるのだが、窓といっても窓硝子を全部とってしまったところでたいしたこともないちっぽけなものだし、それに部屋のなかを覗かれることを極度におそれている佐伯は夏でもそれをあけようとせず、ほんの気休めに二三寸あけてそこへカーテンを引いて置き、その隙間から洩れる空気を金魚のように呼吸するだけという風通しの悪さを我慢していたのだ。