후리가나로 읽는 일본 고전
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しがつばか
世相・競馬
織田 作之助
織田 作之助의 世相・競馬(しがつばか)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 19,112자 · 39화면
裏口の裸電燈だ。その灯の下に誰かが佇んでいそうに思われる。いきなりその灯がすっと遠ざかって行く。かと思うと、また引き戻して来る。だんだん近づいて来る。四尺にも足りないちいさな老婆がその灯を持ってとぼとぼやって来るようだ。カラコロと下駄の音が聴える。出会いがしらにふっと顔を覗かれる、あっ、老婆の顔は白い粉を吹いたように真っ白で、眼も鼻も口もない……。
すべてはその道に原因していたんだと、その頃のことを佐伯は最近私に語った。おかげで毎夜身体はへとへとになり、やっとアパートの自分の部屋に戻って何ひとつ手につかず、そうかといって妙な不安に神経が昂ぶっているのでろくろく睡ることもできなかったという。彼はその頃せめてもに無為な生活から脱けだそうとして、いつかは上演されるだろうことを夢みながら、ひそかに戯曲を書こうと思い立っていたのだが、しかしそんな道をそんな風に帰って来た状態でどうして戯曲の仕事が出来たろうか。出来なかったのである。中庭を黒く渡る風の音を聴きながら、深夜の荒涼たる部屋のなかで凝然として力のない眼を瞠いていたという。突然襲って来る焦躁にたまりかねて、あっと叫び声をあげ祈るように両手も差し上げるのだが、しかし天井からは埃ひとつ落ちて来ない。