후리가나로 읽는 일본 고전
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きずあとのはいけい
傷痕の背景
豊島 与志雄
豊島 与志雄의 傷痕の背景(きずあとのはいけい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 19,022자 · 38화면
倦きてくると、帰りは、バスで……。
金はなくとも、バスの切符はいつも用意があった。
なぜなら、彼は市街電車が嫌いだった。市街電車は、どこから云っても、箱の感じだ――出入口の小さな踏段と、扉と窓と、堅牢そうな車体と、前後につっ立ってる制御機の鉄の円筒と……を以てして。それが人間を一杯つめこんで、二本のレールの上を、のろのろと走るのである。牢獄的交通機関……。だが、バスの方は、フォードの古型でも、まだよい。電車よりも、軽快で、自由で、危険な愛嬌があって、速力が早い。速力……汽車や高架地下の電車のことを思えばこれが最も肝要な点……。
杉本はぼんやり考えながら、バスを待つのだった。
そのバスに乗った或る時――
昼間の散歩の帰りで、没しかねてる夕日に、慌しい街路がぱっと照らされていた。そういう時刻に、時折、妙にすいたバスが通ることがある――一寸息をついたという形で。不安なせかせかした夕方の、ひと時の隙間なのだ。
杉本は一層茫漠たる様子で、五六人の乗客を、ぼんやり眺めていた。
「……頼みますよ。」
声に気がついた時、バスは上野広小路から、切通下で一寸停ったのが、もう動きだしていた。