후리가나로 읽는 일본 고전
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
国枝 史郎의 八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 160,664자 · 323화면
ここまで語って来た杉右衛門は岩の上に突っ立ったまま静かに四辺を見廻した。
文政元年秋の事でここ八ヶ嶽の中腹の笹の平と呼ばれている陽当りのよい大谿谷には真昼の光が赭々と今一杯に射し込んでいる。既に八つの峰々には薄白く初雪が見えているが、ここまでそれが下りて来るには一月余りの余裕があろうか。見渡す限りの山々谷々には黄に紅に色を染めた幾億万葉の紅葉が錦を織って燃え上がっている。眼の下遥かの下界に当たって、碧々と湛えられた大湖水、すなわち諏訪の湖水であって、彼方の岸に壁白く石垣高く聳えているのは三万石は諏訪因幡守の高島城の天主である。
天晴れ気澄み鳥啼きしきり長閑の秋の日和である。
「さて」と杉右衛門は語りつづけた。「我らのご先祖宗介様が正親町天皇天正年間に生きながら魔界の天狗となりこの八ヶ嶽へ上られてからは総る下界の人間に対して災難をお下しなされたのだ。そしてご自分の生活方も下界の人間とは差別を立てられ家には住まず窩に住まわれた。そのうち四方から宗介様を慕って多くの人間が登山して参ったが、それらはいずれも人界において妻を奪われ子を殺され財宝を盗まれた不幸の者どもで、下界の人間総てに対して怨恨を持っている人間どもであった。