후리가나로 읽는 일본 고전
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やつがたけのまじん
八ヶ嶽の魔神
国枝 史郎
国枝 史郎의 八ヶ嶽の魔神(やつがたけのまじん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 160,664자 · 323화면
「お露は俺を愛している。その愛のために泣いている」
葉之助はこう思った。
そうしてそれは本当であった。
一時よく来た葉之助が、ピッタリ姿を見せなくなって以来、お露の恋は悲しみと変った。月日が経つに従って、その悲しみは深くなった。ある種類の女にとっては恋人の姿の見えないことは、その恋をして忘れしめる。少くも恋をして薄からしめる。しかしある種の女にとっては、反対の結果を持ち来たらせる。
お露は不幸にも後者であった。
葉之助の姿が見えなくなってから、本当の恋が始まったのであった。
その恋人が久しぶりで今日姿を現わしたのである。耐え忍んでいた恋しさが――持ち堪えていた悲しさが、一時に破れたのは無理もない。しかし彼女は処女であった。その恋しさ悲しさを、恋しい男にうちつけに打ち明けることは出来なかった。そこで彼女は人目を避け、亭へ泣きに来たのであった。
葉之助の手がしっかりとお露の肩を抱いていた。彼女にとってこの事は全く予期しない幸福であった。それこそ全世界の幸福が一度に来たように思われた。彼女の心から一刹那悲しみの影が消え去った。身も心も痲痺れようとした。