후리가나로 읽는 일본 고전
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ひみつ
刺青・秘密
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎의 刺青・秘密(ひみつ)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 32,935자 · 66화면
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己は随分旅行好きで、京都、仙台、北海道から九州までも歩いて来た。けれども未だこの東京の町の中に、人形町で生れて二十年来永住している東京の町の中に、一度も足を蹈み入れた事のないと云う通りが、屹度あるに違いない。いや、思ったより沢山あるに違いない。
そうして大都会の下町に、蜂の巣の如く交錯している大小無数の街路のうち、私が通った事のある所と、ない所では、孰方が多いかちょいと判らなくなって来た。
何でも十一二歳の頃であったろう。父と一緒に深川の八幡様へ行った時、
「これから渡しを渡って、冬木の米市で名代のそばを御馳走してやるかな。」
こう云って、父は私を境内の社殿の後の方へ連れて行った事がある。其処には小網町や小舟町辺の掘割と全く趣の違った、幅の狭い、岸の低い、水の一杯にふくれ上っている川が、細かく建て込んでいる両岸の家々の、軒と軒とを押し分けるように、どんよりと物憂く流れて居た。小さな渡し船は、川幅よりも長そうな荷足りや伝馬が、幾艘も縦に列んでいる間を縫いながら、二た竿三竿ばかりちょろちょろと水底を衝いて往復して居た。
私はその時まで、たびたび八幡様へお参りをしたが、未だ嘗て境内の裏手がどんなになっているか考えて見たことはなかった。