후리가나로 읽는 일본 고전
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しせい
刺青
谷崎 潤一郎
谷崎 潤一郎의 刺青(しせい)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 5,651자 · 12화면
やがて彼は左手の小指と無名指と拇指の間に挿んだ絵筆の穂を、娘の背にねかせ、その上から右手で針を刺して行った。若い刺青師の霊は墨汁の中に溶けて、皮膚に滲んだ。焼酎に交ぜて刺り込む琉球朱の一滴々々は、彼の命のしたゝりであった。彼は其処に我が魂の色を見た。
いつしか午も過ぎて、のどかな春の日は漸く暮れかゝったが、清吉の手は少しも休まず、女の眠りも破れなかった。娘の帰りの遅きを案じて迎いに出た箱屋迄が、
「あの娘ならもう疾うに帰って行きましたよ」
と云われて追い返された。月が対岸の土州屋敷の上にかゝって、夢のような光が沿岸一帯の家々の座敷に流れ込む頃には、刺青はまだ半分も出来上らず、清吉は一心に蝋燭の心を掻き立てゝ居た。
一点の色を注ぎ込むのも、彼に取っては容易な業でなかった。さす針、ぬく針の度毎に深い吐息をついて、自分の心が刺されるように感じた。針の痕は次第々々に巨大な女郎蜘蛛の形象を具え始めて、再び夜がしら/\と白み初めた時分には、この不思議な魔性の動物は、八本の肢を伸ばしつゝ、背一面に蟠った。
春の夜は、上り下りの河船の櫓声に明け放れて、朝風を孕んで下る白帆の頂から薄らぎ初める霞の中に、中洲、箱崎、霊岸島の家々の甍がきらめく頃、清吉は漸く絵筆を擱いて、娘の背に刺り込まれた蜘蛛のかたちを眺めて居た。