후리가나로 읽는 일본 고전
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めいじんでん
名人伝
中島 敦의 名人伝(めいじんでん)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 5,782자 · 12화면
その断崖から半ば宙に乗出した危石の上につかつかと老人は駈上り、振返って紀昌に言う。どうじゃ。この石の上で先刻の業を今一度見せてくれぬか。今更引込もならぬ。老人と入代りに紀昌がその石を履んだ時、石は微かにグラリと揺らいだ。強いて気を励まして矢をつがえようとすると、ちょうど崖の端から小石が一つ転がり落ちた。その行方を目で追うた時、覚えず紀昌は石上に伏した。脚はワナワナと顫え、汗は流れて踵にまで至った。老人が笑いながら手を差し伸べて彼を石から下し、自ら代ってこれに乗ると、では射というものをお目にかけようかな、と言った。まだ動悸がおさまらず蒼ざめた顔をしてはいたが、紀昌はすぐに気が付いて言った。しかし、弓はどうなさる? 弓は? 老人は素手だったのである。弓? と老人は笑う。弓矢の要る中はまだ射之射じゃ。不射之射には、烏漆の弓も粛慎の矢もいらぬ。
ちょうど彼等の真上、空の極めて高い所を一羽の鳶が悠々と輪を画いていた。その胡麻粒ほどに小さく見える姿をしばらく見上げていた甘蠅が、やがて、見えざる矢を無形の弓につがえ、満月のごとくに引絞ってひょうと放てば、見よ、鳶は羽ばたきもせず中空から石のごとくに落ちて来るではないか。