후리가나로 읽는 일본 고전
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めいじんじごく
名人地獄
国枝 史郎
国枝 史郎의 名人地獄(めいじんじごく)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 149,286자 · 301화면
甚三の馬が悠々と、主人の兇事も知らぬ顔に、一心に草を食っていた。その鞍壺へ手を掛けると甚内は翩翻と飛び乗った。ピッタリ馬背へ身を伏せたのは、手裏剣を恐れたためであって、「やっ」というと馬腹を蹴った。馬は颯と走り出した。馬首は追分へ向いていた。月皎々たる芒原、団々たる夜の露、芒を開き露をちらし、見る見る人馬は遠ざかって行った。草に隠れ草を出で、木の間に隠れ木の間を出で、棒となり点とちぢみ、やがて山腹へ隠れたが、なおしばらくはカツカツという、蹄の音が聞こえてきた。しかしそれさえ間もなく消えた。
余りの早業に三人の者は、手を拱ねいて見ているばかり、とめも遮りも出来なかった。苦笑を洩らすばかりであった。
「素早い奴だ、あきれた奴だ」
博徒姿の旅人は、こうつぶやくとニヤリとしたが、道中差しを鞘へ納めると、その手で菅笠の紐を結んだ。それから二人の武士の方へ、ちょっと小腰を屈めたが、追分の方へ足を向けた。
「失礼ながらお待ちくだされ」一人の武士が声を掛けた。拳隠れの構えをつけ、甚内を驚かせた武士であった。他ならぬ平手造酒であった。
「何かご用でござんすかえ」旅人は振り返って足を止めた。