후리가나로 읽는 일본 고전
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
原 民喜의 夏の花・心願の国(なつのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 152,816자 · 310화면
女は赤いマフラをしていた。その眼はビルの窓ガラスのように冷たかった。二度目に遇ったのも、やはりその佗しいビルの一室であった。会合が終ったとき女がはじめて彼に口をきいた。それから駅まで一緒に歩いた。
「わたしと交際ってみて下さい。またいつかお会い致しましょう」
みて下さい……という言葉が彼の意識に絡まった。が、彼はさり気なく冷やかに肯いた。冷やかに……だが、その頃、彼は身を置ける一つの部屋さえ持てず、転々と他人の部屋に割込んで暮していた。そんな部屋の片隅でノートに書いていた。
〈踏みはずすべき階段もなく、足は宙に浮いている。もしかすると彼は墜落しているのだろうか。だが、彼の眼は真さかさまに上を向いていて、墜落してゆく体と反対に、ぐんぐん上の方へ釣上げられてゆく。絶叫もきこえない。歓声も湧かない、すべては宙に浮んだまま。(無限階段)〉
女は彼と反対側の電車で帰った。淋しそうな女だが、とにかくああして帰って行く場所はあるのかと、何となしに彼は吻とした。人間が地上にはっきりした巣をもっていること(それは妻が生きていた頃なら別に不思議でもなかったが)今では彼にとって殆ど驚異に近かった。