후리가나로 읽는 일본 고전
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なつのはな
夏の花・心願の国
原 民喜
原 民喜의 夏の花・心願の国(なつのはな)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 152,816자 · 310화면
眼だけで、縋りつくように、波間から……波間から……波間から……。
宿なしの彼は同室者に対する気兼ねから、饉じい体を鞭打ちながら、いつも用ありげに巷の雑沓のなかを歩いていた。金はなく、彼の関係している雑誌も久しく休刊したままだった。知人のKが所有するビルの一室が、もしかすると貸してもらえるかもしれないという微かな望みがあったが、いつも波間に漾っているような気持で雑沓のなかを歩いていた。……彼の歩いてゆく前面から冬の斜陽がたっぷり降り灑ぎ、人通りは密になっていた。省線駅の広場の方まで来ていたのだ。その時、恰度電車から吐き出された群衆が、改札口から広場へ散って行くのだった。彼は何気なく一塊りの動く群に眼を振向けてみた。と、何か動く群のなかにピカッと一直線に閃くものがあった。赤いマフラをした女の眼だ。……あの女かもしれないと思った瞬間、彼はもう視線を他へ外らしていた。が、ものの三十秒とたたないうちに、彼は後から呼び留められていた。
「平井さん……かしらと思いました」
女はそう云ったまま笑おうとしなかった。彼も無表情に立っていた。
「今日はこれから訪ねて行くところがあるので失礼致しますが、またそのうちにお逢いできるでしょう」